土屋俊コレクションの第5巻刊行が待たれるなか、童画・つぶやき・えほん塾ウェブサイト http://www.ehonj.com/ がオープンになった。えほん塾とはいえ、講師が手ほどきをしてくれるわけではなく、
・イラストとテキスト、それにコメントの書き込みによって構成されるWEBサイトです。
・最初に「寄合」を立て、パスワードを持つメンバーで投稿を繰り返します。
・イラスト単体の投稿ではなく、メンバーと投稿を繰り返してストーリーを紡いでいきます。
・外部からの多彩なコメントの書き込みによって作品が鍛えられます。
というようなシステムになっている。このサイトの開発中、このシステムは学術方面でも使えることに気がついた。そこで、神戸大学名誉教授の西光義弘先生にお願いしている動画サイトもこのシステムを使っていただくことにした。西光先生とは1980年、林栄一先生還暦記念論文集でお世話になって以来30年に及ぶお付き合いであるが、当時この著作集は活版で組まれた。その後、DTPの時代になり、通信手段も電話・はがきからメール一辺倒になり、さらにはウェブを利用した掲示板、そしてスカイプを利用した遠隔会議も開かれるようになった。このように長い年月を経ても変わることなく先生方と仕事をしてこられたのは幸運なことであった。一つには日本の経済が成長を続け、また国際化により、語学教育という応用言語学の分野がたえず発展を続けてきたことが大きいだろう。現在我が国は低成長にあえいでおり、そのしわ寄せは若い世代に向かっている。童画・つぶやき・えほん塾のトップページも子育て中の世代に呼びかける内容となっているが、今後学術分野における予算措置が低調になろうとも、いままでどうり、学術発信に関わっていきたいと考えているわが社にとってはウェブサイトの利用は避けて通れない道となっている。幸い社員は西光先生をお迎えしての動画収録の準備に積極的に取り組んでいるし、日ごろパソコンに向かっている時間が多いので、歩き回ったり、カメラの位置を調整したりする作業は楽しそうである。
2年前の8月、土屋コレクションの各巻タイトルを決める際、5巻のはじめのタイトルは「デジタル化社会の迷いと帰結」であったように記憶している。私としては「帰結」という専門的な用語に引っかかるものを感じ、著者に再考をお願いしたのであるが、それを入れて先生の方から提示された言葉は「展望」「希望」といったものであった。全6巻のうち、一つくらいは「文学」のことばが欲しいという私の願いを聞き入れて先生は「希望」という言葉をえらんでくださった。
出版業界は電子書籍の黒船襲来やその他積年の要因により、大きく動揺しているが、この「希望」という言葉をひそかに掌中に養いつつ童画サイトも動画サイトも運営されていくことになるだろう。